ものがたり - 北村薫

ここのところ、時系列的に北村薫を追いかけている。間に佐伯泰英の居眠り磐音 江戸双紙を挟みながら。

今日は丁度文春文庫から出ている短編集「水に眠る」を帰宅途中の電車で読み終えた。

ご承知の通り推理小説家の手による作品集なのだけれど、一般的に言う謎解きの小説が詰まったものではない。どちらかというと謎を孕んだ「想い」を詰まらせたままに読者を放置する小説集だ。

どの作品もとても切ないものなのだが、私が気に入ったのは「ものがたり」という作品。ある種の「凄味」を感じさせる作品で、受験生の女子高生が語る「ものがたり」の押し殺した激情を隠し切れない艶っぽさと言ったら発禁ものである。

かくして主人公である大人の男も高校生の世代の「女性」に振り回されるのである。