スキップ - 北村薫

時系列で北村作品を追いかけている。本日読了したのが「スキップ」。文庫にしてずっしりと重い、即ち長編である。

ところで、皆さんは裏表紙にある「あらすじ」のごとき書きつけや、巻末の解説を事前にお読みになるのだろうか。私は可能な限りそれらを避ける。時に読んでおいた方が良かったな、、と思う作品もないわけではない。ただ、私には興ざめとなることの方が多かろうということで避けて通る。

読み始めた。

本格ミステリー、推理小説を当たり前の様に想像しているから、出だしの展開に青春小説なのか知らんと少々戸惑いつつも、当たり前の展開が起こるのを期待しつつ読み進める。。するとあろうことかSF的展開にとなり、一ノ瀬真理子さんは時空を飛び越えてしまう、タイムマシンに乗って、、、の方がどれだけ気楽だったことか。しかし、北村氏はそのような安穏とした読み方をさせてくれない。ま、そこが好きなのだが。

余りの仕打ち?に思わず主人公に肩入れしてしまう。そして、とてもやり切れない哀しい気持ちに包まれてしまう。自分だったら到底耐えられないかも知れない、と思う。それは自分が「心の若さ」を失っているのだということを知り一段とやりきれない気分になる。

主人公(桜木)真理子は外見のおばさんとはかけ離れて17歳の心のままだ。たとえようもなく純粋だ。いささか滑稽な設定に思われる箇所も少なくない。でも、真理子の純粋さがとてもいじらしく、ゆえにおかれた状況の厳しさが心に刺さる。学校という舞台設定も良かったと思う。

一つのシーンを思い出してみる。

心は17歳、外見は42歳。そんな真理子が18歳になったばかりの優等生の新田君に告白され、震えんばかりの喜びを感じる。そしてフォークダンス。はて、、、、やはりこれはちょっと恥ずかしくなるくらいの「青春小説」なのではないのか知らん。

もう一つ、一ノ瀬真理子にとっては見ず知らず、でも将来の旦那である桜木氏が吐露した真摯な気持ち。肉体は老いても、心は老いることはないと信じていたのだが、そうではなかった。という言葉。ズシリと心に刺さった。痛かった。

北村氏の色彩の紡ぎだし方を絶賛する向きは多い。勿論私にも異論はない。この小説でも随所に鮮やかな色彩を咲かせている。でも、今回長編ということもあってか、比較的多くの登場人物が描かれている。そのどの人物もとても一所懸命で素敵なんだ。

なんだか真剣勝負のスポーツの試合を観た後の様な爽快感が残った。