ガール・オン・ザ・トレイン(ポーラ・ホーキンズ著)

ピエール・ルメートルの「悲しみのイレーヌ」の結末の衝撃(タイトルやらからなんとはなく想像は出来たが)も冷めぬまま、あとがきを読む。そこにいくつか紹介されていた本書を図書館で予約し読んだ。

どちらかと言えば静かなスタートだ。ルメートルの筆致との違いに戸惑い、なかなか読み進むスピードも上がらない。

アルコール依存症であることが明らかなレイチェルの語る内容の異常さが徐々に際立っていく。ただこれは驚きの結末に至る壮大な伏線だった。外からは分からない人間の内面を描き出しているのだが、それぞれの抱える闇の深さに読んでいるこちらの気分はどんどん重いものになる。

どうしてレイチェルは無意味(と思われる)行動を衝動的にとってしまうのだろう。アルコール依存症で「きっと」酷い外見になってしまっているから立場をどんどんと悪い方向にもっていってしまうのに。しかし、これらがすべて彼女自身が殻を破るために必要不可欠であったことが分かる。

立場の弱い女性(に限らない)が、なんらかの弱点を突かれて理不尽に追い込まれていく、すべて自分が悪いのだと洗脳されてしまう。尽きることのない社会的な問題を描き出している。